2008年4月6日日曜日

椋21号




椋集作品




早春       石田郷子

寒林に日の昇りくる無音かな
ここへ来ていつも息つく冬柏
並べては吊しては春近きかな
冬鴎尻をはしよりてとまりけり
一月の海原といふ目を上ぐる
林檎食む音のしばらく雪の果
早春や暁に火を見てあれば
梅を見に童女が父をしたがへて
枝の雪ぱさりぱさりと春の鴨
春の暮うしろ歩きの流行るらし



椋アンソロジー   石田郷子編

日輪に暈ある日なり冬薔薇    原田あきら
冬晴やあれは確かにユニコーン    大須賀打打
けあらしの幌かくごとく水平線   土門きくゑ
手のひらに教へる雪の浴び方を    古谷順子
人形のたをれやすさや暮早し    せいじ
TOKYOや闇鍋の蓋開かぬらし    渡部重利
アイスホッケー健やかな膝が来る    柿崎理恵
ストーブを点けて暫くもの思ふ    小関菜都子
雪積もる洗濯ばさみの嘴に    川島 葵
年の尾の畳の下の新聞紙    井関雅吉
初電車三人掛けに五人の子    かやと
臘梅やいつも明日を楽しみに    日余子
初富士を吾子の姿と仰ぎ見る   廣岡大子
巫の袴をはたく焚火かな    相羽英治
跼み合ふめでたき顔や初泉    こうだなゑ
松とりて船宿幟かかげけり    小川 久
輪郭の光もちけり冬鷗    林 のあ
寒中の走り根隆と乾きをり    井上和佳子
寒木瓜の紅のしづくをこぼしけり    立本美知代
水仙に川面眩しきときありぬ    対中いずみ
いと長き星の光芒鬼やらひ    Aki
満願の鯛の供物や鬼やらひ    境野大波
たつぷりの湯に入る達磨市の夜    安藤恭子
雪吊を解くあをぞらに松の枝   小椋 螢
うららかや大工の二人音たてて    亀井千代志
鳴き声のすこし上手に梅ひらく    北川比沙子
腹筋を鍛へしバレンタインデー    西田邦一
窓際にふたつ空けある春の席    小林すみれ
男手を大いに借りて雛飾る   髙橋志げ子
春眠のかたへにいつも椅子の腕    岩崎裕子
ちりちりと耳朶熱し茨の芽    ともたけりつ子
足跡は砂をかむりて春の波   小林木造
如月に片手翳してをりにけり    宇野恭子
すぐ終はる鶏のけんかや春の霜    海津篤子
にはとりの放たれてゐる黄砂かな   田野いなご
たつぷりと濡れし木の芽のひとやすみ    市川 圭
さよならではじまる春の夕暮は    木の子
春の暮うしろ歩きの流行るらし    石田郷子






*椋21号は4月5日に発行されました。












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