2008年9月11日木曜日

椋23号


明眸
              石田郷子

泉までさびしき人を連れてゆく
薔薇ひらきけり甦るものとして
片腕に赤子抱きゆく青嵐
金魚の目ふはふは移りゆきにけり
 Mさん 二句
明眸の滝に打たれにゆくといふ
前世も淋しかりしと夏帽子
お下げ髪ねむる紫陽花電車かな
栗の花目に雨粒の飛び込んで
杉山のすらりすらりと蛍狩
明易の湯宿に大き忘れもの




椋アンソロジー

硝子戸に樺の影落つ雪の果  柿崎理恵
だんだんに耳の開いて百千鳥  林 のあ
熊ん蜂多羅の花をばわしづかみ  清水冬芽
弁当の箸で摘みし落花かな  藤田ありこ
藤棚をつらぬく雨となりにけり  小林木造
雛罌粟にわれのむつつりしてゐたる  亀井千代志
豆御飯ふたつの貌を持ちて棲む  かすみ
母の日の母に介抱されてをり  深村清美
かにかくに大輪の薔薇崩れけり  守屋さつき
いななきの夕べはさみし袋掛  藤井紀子
麦秋が好きと答へし人の亡く  小川 久
柿の花こぼるる外のなき如く  相羽英治
今年竹風を切つては輝いて  髙橋白崔
一頭の蛾が声を出す青葉山  海津篤子
菓子の箱うつくしかりし新茶かな  福田うずら
安曇野のあかとき冷ゆる針槐  対中いずみ
この川の静かに濁る針塊  柚子谷イネ
一杓のびつくり水や走り梅雨  こうだなゑ
三時草咲くころ会の果つるころ  立本美知代
更科や三日月ほどの田を植ゑて  星野 繭
三味線の糸ひとつ撥ね梅は実に  かやと
梅干してある縁側に父の客  小椋 螢
雨脚をうかがふ顔や梅漬けて  安藤恭子
濃紫陽花ぱちんと雨の弾かるる  ともたけりつ子
梔子やひと降りに人ゐなくなる  小関菜都子
梅雨寒の川は流れてゆきにけり  小林すみれ
われ責むるものを流せり夏の川  岡村潤一
目薬の一滴まぶし太宰の忌  田野いなご
六月の闇を祀れる社かな  境野大波
時鳥ともにさみしき窓明り  市川 圭
郭公や帽子に白い花を挿し  橋本シゲ子
夏帽子イネ科カヤ属花満てり  高橋 梓
あの大き森のみどりに入りゆかな  田中遥子
言の葉をつよく放ちし土用波  宇野恭子
夕凪やますます椰子の伸びあがる  今田宗男
山城は山に戻りぬ夏の雲  松村 實
夏の雲アインシュタイン舌出して  あさぎ
雪渓の窓の大きな朝餉かな  井上和佳子
善光寺平の風や三尺寝  Aki
炎昼の咀嚼重機やルリハムシ  石田太郎
蛇泳ぐ頭の一点の光りけり  岩崎裕子
莢の豆弾け飛んだる大雷雨  北川比沙子
湧き出づる泉の底の玉の石  廣岡大子
樫の花椎の花咲く泉かな  川島 葵
泉までさびしき人を連れてゆく  石田郷子



☆「椋」23号は八月五日に発行されました。

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