椋集より
木の花
石田郷子
木の花のこぼれて厚き弥生かな
ピーターが春の日傘を挿してきし
田返しに椋鳥八羽ついてゆく
桜桃の花影に道教はりぬ
月山の雪解の水やしぶきけり
我も摘む少し長けたる蕗のたう
女湯に男の子あそべる八重桜
武具飾る躑躅祭のただなかに
バナナ剥く春を惜しみてゐるごとく
みちのくは菜の花明りして遥か
椋アンソロジー 石田郷子選
吹き荒れて大地かたむく柳かな 小椋 螢
階の水より伸びる柳かな 川島 葵
ついと来て二月の牡丹散らしたる 立本美知代
ささやきの届く高さや紅の梅 宇野恭子
芽柳の風の中から万太郎 小川 久
雪やなぎ雨は三日にわたりたる 小林木造
門灯に夜が来てをり沈丁花 せいじ
一面の羽まみれなる春の泥 安藤恭子
揃へたる指の冷たき雛かな 柿崎理恵
春塵をはらひお訪ね申しける 岩崎裕子
ひる近しぽつと開きぬ耳菜草 井上和佳子
たんぽぽにジーンズのすぐたち上がる 柚子谷イネ
麗かにギターケースの置いてあり 亀井千代志
陽炎をはみ出して来し笑顔かな 田野いなご
息荒く花の鞍馬へ詣でけり 柚子
春の夢ひらりひらりと花に逢ふ 近藤あかね
ぺたんこにたたむ袋や花疲れ 小関菜都子
菫草空のビードロ見てをりぬ 加藤 鶫
芽吹く樹々降り出す雨にすぐ匂ふ 谷川つきよ
落椿回して水の流れけり 相羽英治
落椿去来するものなかりけり 西田邦一
葭焼の火屑あらあら降りかかる あかね雲
ゆれてゐる水となりたる四月かな 遠藤 統
蝌蚪見むと踏み抜きさうな板にかな Aki
ぐつと口結ぶや蝌蚪を掬はむと 田中遥子
いくすぢも川ある街やつばくらめ 清水冬芽
初蝶にすこし蹤かれる嬉しさよ 高橋白崔
豆の花牧場の馬の吹かれをり 林 のあ
菜の花や胸の奥処に父の空 木の子
春の坂登る鳥語の真下まで 森 日雀
還らぬ日畑に投げつく葱の擬宝 松本フミエ
春暁の大きな門をひらきけり 橋本シゲ子
春の夢動悸ひとつを残しけり あさぎ
春昼のふたをあければカモミール 海津篤子
それぞれの叫びを聴きて種選び ともたけりつ子
瓜に爪有り爪に爪無し瓜を蒔く 鈴木かづゑ
病室のアネモネ淡き三分粥 池田幸子
チューリップ花の底まで日が届き 境野大波
まつすぐの雨まつすぐのチューリップ 古谷撫子
この椅子に座るといつも春の雷 和田小麦
二重なる大夕虹やワイン酌む 澤瀉邦安
山若葉言葉貧しく仰ぎけり 高橋 梓
水筒の水に洗ひて野蒜食ぶ こうだなゑ
春落葉祈りたらざる思ひして 対中いずみ
バナナ剥く春を惜しみてゐるごとく 石田郷子
椋22号は6月5日に発行されました。
木の花
石田郷子
木の花のこぼれて厚き弥生かな
ピーターが春の日傘を挿してきし
田返しに椋鳥八羽ついてゆく
桜桃の花影に道教はりぬ
月山の雪解の水やしぶきけり
我も摘む少し長けたる蕗のたう
女湯に男の子あそべる八重桜
武具飾る躑躅祭のただなかに
バナナ剥く春を惜しみてゐるごとく
みちのくは菜の花明りして遥か
椋アンソロジー 石田郷子選
吹き荒れて大地かたむく柳かな 小椋 螢
階の水より伸びる柳かな 川島 葵
ついと来て二月の牡丹散らしたる 立本美知代
ささやきの届く高さや紅の梅 宇野恭子
芽柳の風の中から万太郎 小川 久
雪やなぎ雨は三日にわたりたる 小林木造
門灯に夜が来てをり沈丁花 せいじ
一面の羽まみれなる春の泥 安藤恭子
揃へたる指の冷たき雛かな 柿崎理恵
春塵をはらひお訪ね申しける 岩崎裕子
ひる近しぽつと開きぬ耳菜草 井上和佳子
たんぽぽにジーンズのすぐたち上がる 柚子谷イネ
麗かにギターケースの置いてあり 亀井千代志
陽炎をはみ出して来し笑顔かな 田野いなご
息荒く花の鞍馬へ詣でけり 柚子
春の夢ひらりひらりと花に逢ふ 近藤あかね
ぺたんこにたたむ袋や花疲れ 小関菜都子
菫草空のビードロ見てをりぬ 加藤 鶫
芽吹く樹々降り出す雨にすぐ匂ふ 谷川つきよ
落椿回して水の流れけり 相羽英治
落椿去来するものなかりけり 西田邦一
葭焼の火屑あらあら降りかかる あかね雲
ゆれてゐる水となりたる四月かな 遠藤 統
蝌蚪見むと踏み抜きさうな板にかな Aki
ぐつと口結ぶや蝌蚪を掬はむと 田中遥子
いくすぢも川ある街やつばくらめ 清水冬芽
初蝶にすこし蹤かれる嬉しさよ 高橋白崔
豆の花牧場の馬の吹かれをり 林 のあ
菜の花や胸の奥処に父の空 木の子
春の坂登る鳥語の真下まで 森 日雀
還らぬ日畑に投げつく葱の擬宝 松本フミエ
春暁の大きな門をひらきけり 橋本シゲ子
春の夢動悸ひとつを残しけり あさぎ
春昼のふたをあければカモミール 海津篤子
それぞれの叫びを聴きて種選び ともたけりつ子
瓜に爪有り爪に爪無し瓜を蒔く 鈴木かづゑ
病室のアネモネ淡き三分粥 池田幸子
チューリップ花の底まで日が届き 境野大波
まつすぐの雨まつすぐのチューリップ 古谷撫子
この椅子に座るといつも春の雷 和田小麦
二重なる大夕虹やワイン酌む 澤瀉邦安
山若葉言葉貧しく仰ぎけり 高橋 梓
水筒の水に洗ひて野蒜食ぶ こうだなゑ
春落葉祈りたらざる思ひして 対中いずみ
バナナ剥く春を惜しみてゐるごとく 石田郷子
椋22号は6月5日に発行されました。